2013年5月30日木曜日

リマ会合では何が決まったのか、何が決まらなかったのか―やはり危険な日本の参加


 524日、ペルーの首都・リマでの第17TPP交渉会合が終わった。

 私自身は、シンガポール交渉会合と同様、米国NGOパブリック・シチズンのメンバーとしてステークホルダーに登録し、517~23日まで現地に滞在した。

 TPPに関心を持つ多くの日本の人たちや日本のメディア、そして何よりも日本政府や財界にとって最も注目されたのが、「次回会議日程」と「日本がどれだけ参加可能か」だっただろう。すでに交渉最終日の記者会見で発表されたとおり、「715~25日、マレーシアにて」である。日本の参加は、米国議会承認を得られる最短の23日ないしは24日からの2,3日ということになる。

 

 前回のブログで書いたとおり、日本政府はこの間、一日でも長く交渉参加できるよう、熱烈なラブコールを各国政府に送ってきた。しかし、現地で私が情報収集した限り、交渉官たちはその要望にまともに応えようとしてはいなかった。もちろん「日本が参加すること」は全体として歓迎しているというニュアンスだったが、すでに内々で決まっていた日程を大幅にずらしたり、また会期を延長してまで日本の側に立つ義理も温情もない、という印象だ。要は「日本には7月の交渉参加という形式は与えるが、実質的には9月に来ればよい」ということなのだ。


交渉会場の超高級ホテル、マリオット(リマ)
 私は当初、「それでは9月に日本が、すでに多くが決まっている交渉内容にただサインをするだけではないか」と感じた。しかし3月以降からの交渉自体の進展を見ていると、またペルーで交渉官やNGOの仲間たちと情報交換を進めているうちに、必ずしもそのようなシナリオが成立するわけではない、と思い至るようになった。

 日本では、マスメディアはもちろん、反対運動にかかわる人たちの間でも、「TPP交渉自体がどうなっているのか」ということへの把握と分析がまだ弱いように思う。もちろん日本はまだ交渉に参加しておらず、またそもそもTPP交渉自体が秘密である。さらにいえば言語の問題もあり(膨大な英文の情報を読むこと自体相当時間もかかる)、仕方ない面もある。しかし交渉の流れ自体を読み解いていかなければ、反対運動もロビイングも、ましてや自国・他国の交渉官に市民社会の声を十分に伝えていくことも難しい。

 

★交渉はどこまで進んだのか?

  さて、リマ会合での進展について。
 3月に開催された第16回シンガポール交渉を受けて、USTRは以下の4つの分野についてはテキストの確定というレベルまで作業が進んだと発表した。

*制度間整合性(制度的事項)regulatory coherence
*税関(貿易円滑化)
*協力(開発)development
*電気通信サービス 

 各種の情報によると、リマでは、これに加えて以下の分野にそれなりの進展があったと思われる。少なくとも大枠合意、分野によってはテキストの作業も完了という意味である。

 *投資
 *越境サービス貿易
 *電子商取引
 *金融サービス 

 この状況を、「ここまで進んだのか」と見るのか、「まだここまでしか進んでいないのか」と見るのか。私を含む国際NGOチームの見解は、後者である。TPPには24の分野がある。仮に上記がテキストレベルまで完成していたとしても、まだたったの8分野。3分の1である。しかも、上記のような形で「作業化」できる分野というのは、全分野のうち比較的「もめていない」分野である。

 一方、TPP24分野の中には、実はもう歩み寄りが不能というほど深刻な遅滞をもたらしている分野がいくつかある。まずは「知的財産」だ。米国が1年以上も前に素案を出したとたん、それがあまりにも米国と大企業に都合のいい内容だったために、ほぼすべての他国が一致して交渉を拒否したという経緯がある。もし本当に10月妥結を目指すのであれば、知財分野における合意は不可欠だ。そのこともあってペルーでは知財分野の交渉に最大の9日間が割かれていた。しかし、終了した時点で大きな進展はなかったといわれている。知的財産には医薬品の特許問題から、インターネット上の表現と著作権問題、各種のコンテンツの権利など幅広いテーマが含まれている。もちろん米国は製薬会社やコンテンツ産業などの圧力も受けていて、企業側の知的財産権を最大限に保護したいと思い続けているのだが、それは他国(例えばエイズ患者を多く抱えるマレーシアやベトナム)にとっては受け入れ不可能である。米国対他国という対立は深刻なまま残っている。

 他にも、「懸案の分野」として、国有企業の問題、環境、繊維・衣料、そして農業分野における米国との個別交渉などがある。結局、これらは解決されずにリマ会合は終了した。

 NGOの間では、「もし本気で10月妥結を目指しているのであれば、今回のペルーでは相当に本腰を入れ交渉が繰り広げられるはずだった。しかし実際には、予想していたほどの切迫感も緊張感も交渉官からは伝わらず、いささか驚いた」という意見が比較的多い。確かに、感覚的なものも含めて、私自身もそう感じた。
 

10月妥結はあり得るのか? 

 では本当に10月の妥結というのはあり得る話なのだろうか。現地の交渉官や各国の業界団体、そしてNGOなどの声をまとめると「無理だろう」という意見が多かった。会期中、一日だけ持たれる「ステークホルダー会議」では、各国の首席交渉官が広い部屋にズラリと並んで座り、それに私たちステークホルダー約200名が、何でも質問していい時間帯がある。200名のステークホルダーに対する会見というイメージだ。

 ここで国際NGOたちは次々と質問をする。私自身は、このスケジュール問題について聞いてみた。「交渉はまだ10月妥結を目指しているのか」「もしそうならば、おそらく技術的な作業で済む分野と、政治的なレベルで解決しなければいけないものの2つに分かれるのではないか」「10月の時点でそれらの合意も達成できていなければ、どのような発表を行なうのか、またその後のプロセスはどうなるのか」という趣旨である。

 答えは、もちろん「公式見解」だ。「当然10月を目標にしている。遅くても年内だ」と答えたし、その他の質問についてもとても抽象的な回答しかない。しかし会見後に何人かのステークホルダーと話したのは、「交渉官はこの交渉から、『10月を目指す』といいながら、『遅くとも年内』というような補足を言い出した。会見の場面だけでなく、その他の場面でも同じ。これは交渉が遅滞していることを物語っている」ということだ。確かにそうだと思う。そんなムードを感じ取ったのか、ステークホルダー会議の翌日には、参加各国の財界・ビジネスグループが交渉官に対して、「一刻も早く交渉を妥結するように」という強い要請文を提起した。TPPで旨味を得られる財界にとっては、延々と交渉が長引くことは大きなデメリットだからである。

 実際に、TPP交渉自体はすでに始めてから3年間が経過している。2~3カ月に一度、参加国の交渉官は太平洋に面する国々を行き来している。当然、時間もコストもかかる。そこまでのことをしてもまだ決まらない交渉に、シンガポールなどは「これ以上長引けば続けていくのも難しくなる」との声をあげているという。

 しかしだからといって、交渉がすぐに反故になるかといえばそんなことはない。特に米国にとっては、ここでTPPが頓挫しようものなら、貿易だけでなく安全保障の面からも、対中国戦略という意味からも、すべてのプランが水泡に帰してしまう。そんなことを決して許すわけはない。そうなれば、私たちが警戒しなければならないのは、何としてでもTPPを早期にまとめたい米国などが、通常の交渉以外にもあらゆる手を使って交渉の中身をまとめ上げていくことだ。例えば、先に挙げたいわゆる「懸案イシュー」については、業界からの圧力も強まり、他国に対して政治レベルの決着をはかってくるかもしれない。また日本の参加に関しても、問題の「並行協議」も使いながら、とにかく米国にとって不利益なないようにと(もう十分に譲歩しまくっている内容を勝ち取っているのに!)、自動車分野やあらゆる非関税障壁について迫ってくることもあるだろう。 

★年内妥結と「日本からの最大限の譲歩」の両方をめざす米国

 そして、実はもう一つ、米国を中心とする参加国が、交渉をスムーズに進めようと考えている重要な動きがある。

 リマ会合が終了した524日、USTRはいつものように交渉の進展結果についてのプレスリリースを発表した。このプレスリリースの全文および仮訳は、私も加わる「政府と市民の意見交換会」に各種情報リソースとして掲載されているのでそちらを参照されたい(リンクは⇒こちら)。

 まずこの発表自体は、現場に足を運んだり日々情報を収集している私たちからすれば、「大本営発表」そのものである。タイトルは「TPP交渉は力強く前進し続けている(Trans-Pacific Partnership Negotiations Maintain Strong Momentum)」とある。先述の私たちの分析とは真逆の評価である。個別分野の進展についても、「交渉担当者達は、(TPP)協定全般にわたる前進をつくりだした。複数のサービス分野、政府調達、SPS基準、貿易救済、労働、紛争解決といった各分野の交渉グループは、著しい作業の前進をつくりだした。また、これ以外の分野でも、TBT、電子商取引、原産地規則、投資、金融サービス、知的財産、透明性、競争、環境の各分野では、テキストレベルの作業を成功裏に前進させることができた。とりわけ知的財産・競争・環境は課題の多い分野であったが、交渉担当者達は実りある議論をおこない、次のステップに向けて作業を継続することを合意した」とある。これも、我々の評価とは大きく異なる。

さらに、「工業製品、農産品、繊維・衣料品、サービス・投資、政府調達のアクセスを約束する包括的なパッケージをまとめる作業でも、さらなる前進がつくりだされた。関税のパッケージと原産地規則のルールづくりにおいても前進があった」とまで書かれると、唖然としてしまう。このプレスリリースは、「ほぼすべての分野が大きく進展し、10月合意まではあとほんの一歩!大丈夫!」と必死に言っているようだ。しかしここまで大きく出られると、多くの人が「いくら何でもそこまで進んではいないだろう」と、逆に猜疑心を持ってしまうと私は思う。

5月19日、ステークホルダーからの質問に答える交渉官
プレスリリースの最後には、交渉を進展させるための「最善の方法について、ステークホルダー達から提出された意見や要望も反映された」と書かれてある。これは実感を持って違う、と言いたい点だ。「ステークホルダーからの意見や要望」というのは、個別のプレゼンや会話というチャネルもあるが、大きくは先述の「ステークホルダー会見」のことを指している。フロアから次々と専門的かつ幅広い質問が出されたが、私たちが期待していたような意味のある答えはほとんど返ってきていない。そればかりか、予定では「2時間」とされていたこの会見は、フロアにまだ十数人も質問希望者が手を挙げているにもかかわらず、1時間10分くらいが経過した時点で、突然「終了」となったのだ。これにはステークホルダーも閉口し、「まだ質問者がいる」「時間はまだ残っている」と声を挙げたが、一方的に閉会されてしまった。声を聞くという時点でこの様子なのだ。これで、「ステークホルダーたちの意見や要望が反映された」とは決していえない。

もちろん、こうした種類のプレスリリースは当然公式見解であり、過度に「意味ある内容」を期待するのは無理なのかもしれない。しかし、である。限られた情報しかない中で、わずかだが各国政府が発表した資料には、必ずどこかに「隠された意味」があると私は考えている。これら文書を様々な視点から何度も読みかえしてみると、思いがけない「真意」や「含意」に気づかされることがある。前回ブログで発表した「日米事前協議の合意文書」の不一致問題も、そうした問題意識からだ(この文書の不一致はあまりにもあからさまだったので誰でもすぐにわかることだが)。

今回のプレスリリースに関しては、重要な内容、特に日本にとって問題となる箇所がある。一番最後のパラグラフである。

TPP諸国の閣僚達は、今後数ヶ月にわたり、交渉担当者達の作業を導き、懸案となっているセンシティブな問題についての解決策を見出し、TPP首脳の目標である(TPPという)高い質の野心的かつ包括的な協定を、交渉担当者達が年内に実現することが確実となるよう、定期的な関与を続けていく。他方、それぞれの交渉チームは、このリマ会合で到達した前進が継続し得るよう、次回会合までに詰めの作業をおこなうことを合意した」。

このことは何を意味しているのか。最後の数行に注目したい(赤字部分)。

5月末に来日していたパブリックシチズンのロリ・ワラックさん、ニュージーランド・オークランド大学教授のジェーン・ケルシーさんらとの分析と議論を行なった結果、ここには次のような意味があるという。

つまり、日本が実質的に交渉参加する9月までの間に、日本が参加することで生じるいくつかの懸案事項(=日本が今後主張してくるであろう分野・内容)を米国はあらかじめ見越して、交渉会合の間の期間に行なう「中間作業(中間交渉)」にて、日本が参加してくる前に各国の間で「片をつけてしまおう」という約束を取り付けたのではないかというのだ。すでに知られているように、日本は交渉参加するまで、一切のテキストを見ることはできない。すでに決まったテキストについては、文言の修正も再協議の提案もできない。だから米国は、日本との関係で問題になる分野を絞り、少なくとも7月下旬に日本が入ってくる前までに、中間作業を集中的に行なってテキストを完成させたいと思っているということだ。

もちろんこれは、私たちの持ち得るさまざまな情報をベースにした「分析と予想」であり、真実は相変わらず闇の中である。が、遅くとも年内妥結をめざし、かつ同時に日本から「奪えるものは最大限奪いたい」と考える米国の意図から敷衍していけば、この見方にはかなりの説得力がある。

問題は、私たちの側がどうするのか、何ができるのか、という点だ。私たちは単なる情報収集者でも分析者でも評論家でもない。これらの結果や予想をふまえて、国内で、国境を越えて運動をつくり、実践するのが私たちのやるべきことだ。ぜひ多くの方々とさらに運動を広げ、複雑かつ密室の交渉に対抗していきたい。
 

(付記)この原稿を書くにあたっては、国際NGOの仲間たちの情報と知見、また国内の運動の仲間たち(とりわけ市民と政府の意見交換会を2年前から共に開催してきた「TPP意見交換会全国実行委員会」メンバー)からの有益な情報や翻訳に多くの助けをいただきました。感謝。



 

2013年5月21日火曜日

「交渉を急げ」―圧力をかける各参加国&日本の財界


17TPP交渉会合が行なわれているペルー・リマに来ている。
まとまった内容はまだ書けないが、ツイッターでは伝えきれない情報は速報的にブログに掲載していきたい。

 私自身は、前回のシンガポール交渉同様、長年交流のある米国NGO・パブリックシチズンのメンバーとしてステークホルダー(利害関係者)として登録、参加している。日本からの登録者は私一人だけである。他の団体からもリマに来ているが、登録はできていないのでステークホルダーには入れなかったようだ。また日本のメディアも何社か来ている。

 日本はまだ参加国になっていないため、微妙な立場ではあるのだが、国際NGOの一員として交渉官や他のステークホルダーに日本の参加問題や交渉全体の進み具合について情報を聞き出す努力をしている。また、日本においては安倍首相が「TPP参加表明」をしたものの、自民党内にも反発があるばかりか、公約破りの責任を問う声や全国各地でさらに森がる反対運動など、決して「参加表明」はすべての者の意思ではないこと(むしろ安倍政権の暴走であること)を、交渉官やステークホルダーに伝えることも目的にしている。

 
 さて今日は急ぎ、交渉が行なわれている裏で、参加各国の財界と、日本の財界がTPP交渉そのものにかけている圧力についてお伝えしたい。

 TPP交渉会合には毎回、ステークホルダーとして大企業が登録し参加していることはシンガポール交渉後の報告でも述べた。今回はどうなのか。ステークホルダーの数自体は現時点でははっきりわからないが、会場で用意されていたネームタグの数などから推察するに約200~300人だ。また団体・企業数もまだ公表されていない。が、いずれにしても大企業が多数参加していることは事実である(詳細後日)。

 19日のステークホルダー会議の翌日の20日、米国商工会議所や、米国貿易緊急委員会(ECAT)、APECのための米国ナショナル・センター、カナダ農産物輸出連合、ペルー外国貿易協会(COMEXPERU)、ペルー企業連合会議(CONFIEP)、ニュージーランド国際ビジネスフォーラム、シンガポールビジネス連合、チリ産業連合(SOFOFA)、アジア太平洋商工会議所などが各国交渉担当者との「ビジネス会議」と呼ばれる場を持った。まさにTPP参加国の財界・業界団体が一堂に会した会議だ。もちろんこれら企業はTPPを強烈に推進している。多くがステークホルダー会議にも登録している企業・企業連合だ。

 この場で、この企業連合群は交渉官に対し「TPP交渉を今年中に妥結するよう求める」という趣旨の要請を出した(註1)。

 ペルー外国貿易協会の会長は、「アジア太平洋地域における我々の国々の経済成長と、雇用創出はビジネスグループにとって最も優先度の高い課題です。TPPはその課題解決に大きく貢献するでしょう。TPPの妥結が早ければ早いほど、TPPによる利益も早くもたらされます。私たちはTPP交渉の妥結を早急に求めます。特に、懸案となっている重要イシューの解決と、もうすぐ参加することになる日本への対応について、充分に取り組んでいただきたい」と述べている。

 カナダ農産物輸出連合のキャサリン・サリヴァン氏は、「我々、TPP交渉参加11ヶ国における『交渉パートナー』は、日本のTPP参加を支持しています。日本の参加によって、アジア太平洋地域の経済規模はさらに大きくなり、この地域での自由貿易は推進されます」

と述べた。さらに、「TPPは日本および他の交渉国に、包括的で、どのセクター・品目にも例外を認めない、ハイレベルの貿易水準を要求しています」とも述べた。つまりここでも、すべての品目は例外なき関税撤廃の対象となることが改めて確認されたのである。

 TPP自体は、まったくの「秘密裡」に行なわれている。今回は特に、交渉も重要イシューが多く、スケジュールも差し迫ってきているという緊張感もあってか、交渉官から情報を引き出すことがなかなか困難である、というのが国際NGOの共通認識だ。

 しかし、「国」と「国」との交渉の舞台のすぐ隣では、ここで紹介したように各地の財界が交渉官と集まり、財界によるプレッシャーがかけられているのである。

 さらに重要な情報として、このビジネス会合には日本から亀崎英敏氏(三菱商事常勤顧問)も参加し、米国首席交渉官バーバラ・ワイゼルと、ペルー首席交渉官に対し「日本が次回TPP交渉に参加できるよう交渉日程を遅らせるよう要請した」という(註2)。日本政府はいま、なんとか7月の交渉に1日でも多く参加することで、国内向け(特に参院選に向け)に、「TPP交渉に参加できる。聖域も守る。自民党だからできたんだ。だから自民党に投票してくれ」と言いたいのだろう。すでに交渉参加することが目的化している日本政府にとっては、たとえそれがたった1日・2日の「形式的な」参加であってもかまわない。「参加した」と見せることに意義があるのだから。そのために政府間だけでなく財界も一緒になって他国に攻勢をかける姿は、怒りを通り越して恥ずかしく、虚しいばかりだ。「会期延長となり滞在が延びれば、交渉官の滞在費用もかかる」という参加国が出ると、日本政府内では「それらの費用は日本が負担してもよいだろう」という驚くべき案まで出ているという(日経新聞報道)。そこまでして入りたい、と政府を突き動かすものは何なのか。当然、その視野には全国各地からの反対の声、私たちの暮らしや農業、医療、その他分野への悪影響など入っていないし、説明責任放棄や公約破りへの呵責もない。

「命は売り物ではない!」
 
TPPは交渉不能!」

 518日、リマのTPP交渉会合会場である高級ホテル前にて、現地&国際NGOや活動家が集まり、TPP反対アクションを行なった際のスローガンだ。ここペルーではTPPによる影響として、薬の値段の上昇が懸念されている。この言葉を私は、誰よりもまず日本政府に投げつけたい。


【註】

 ●1:http://www.scoop.co.nz/stories/WO1305/S00494/business-leaders-across-asia-pacific-call-for-tpp.htm