2015年7月29日水曜日

オバマ政権は2015年中に「TPP法案採決」と喧伝するが、 ファストトラック(TPA)の日程と一致せず


米国・パブリックシチズンによるリリース

TPP条約採決可能日程】

オバマ政権は2015年中に「TPP法案採決」と喧伝するが、
ファストトラック(TPA)の日程と一致せず

TPP推進派は2015年末に環太平洋連携協定(TPP)を議会で採決したがっている。しかしそうするためには、ファストトラック(TPA)の規定が要件としている通知期間や採決前の報告の期限があるため、少なくとも7月中にTPP交渉を完了(大筋合意などでなく)させなければならないし、TPPの協定文そのものも完成していなくてはならない。もしTPPへの調印の意志の議会への通知が81日までに送付されるならば、最終的なTPPの採決は12月に開かれる会期の最後の週に行いうるだろう。

ファストトラック(TPA)のもとで考えられる最速の日程を想定し、要件とされるTPPの影響(インパクト)についての米国際貿易委員会(ITC)の報告が、もし過去の協定の場合よりも早く完了できれば、TPPの採決は、協定調印の意志を議会が受け取ってから約4か月半後におこなうことができる。
このように、まず交渉は72831日のハワイでのTPP閣僚会議でしめくくらなければならず、協定文は81日までに調印の意志を通知できるように用意されていなければならない。そして協定文そのもののテキストは830日に公示されなければならない。そうなれば1214日の週に採決ができる。そのあとになると、議会は休会に入り採決は2016年にずれ込むことになる。

評判の悪いTPP可決の政治的代償は、大統領選挙がおこなわれる2016年にずれ込めば増大する。すでに民主党、共和党の候補者はTPP批判を開始しており、かれらの公然とした批判は協定がもつ雇用喪失などなどといった潜在的な脅威に一般の人々の目を向けさせている。2016年の採決となると、201611月に行われる議会選挙でTPPに賛成票を投じた議員を有権者が罰することもありうるというリスクを増大させることにもなる。
 
最小限の予定表:交渉終了から議会での採決まで4か月半

この仮説的な予定表は、過去の貿易協定で起きたよりも、重要な問題でより速い方向転換があることと、ファストトラック(TPA)の予定表の若干の変更があること、議会のメルトダウン、反対あるいは議員間の儀礼的支持がないことを想定している。これはファストトラック規定のもとでのTPP採決への最速の予定表である。(引用は2015年ファストトラック法案の条項。)

l  もしTPP「最終合意」が731日のハワイでのTPP閣僚会議で発表されれば. . . .
最終的な「合意」が声明されるとしても、現実にどうやって最終テキストができるのか?知的所有権や投資など中心的ないくつかの章は依然として、政策上の規則をうちだした条文に憲法違反の対立が残っている。
中心的な市場アクセス問題(関税と関税率の割り当て)および原産地規則の問題が未解決のままである。適用除外とコミットメントについてのスケジュールについては、「投資」、「国有企業」、「サービス産業」、「調達」などに関してまだすべてが完了しているわけではない。
このように、いまだに最終テキストが仮調印できるようになっていないのである。多くの問題がこう着状態で残存し、このように最終条文が存在していないので、条文への調印の意志が米議会に通告されようがない。それでも、さしあたり、何らかの条文があって、通告がおこなわれうるということを想定してみよう. . . .

l  もし条文が出来上がっていて、調印の意志を議会に81日までに通告するとすれば. . . 条文が何らかの形で具体化されていることを想定すると(未解決の問題についてTPP各国大使からのコメントがそのような早急の決着に疑問を投げかけているにもかかわらず)、条文は81日までに仮調印されなければならず、1030日にオバマ大統領が署名する意思を90日前までに議会に通告しなければならない。


調印前通告の最小限期間90 ファストトラック(TPA)では大統領は協定調印の少なくとも90日前に議会に通告するよう求めている(Sec. 106(a)(1)(A))。また、TPP調印のすくなくとも90日暦日前までに、オバマ大統領は米国際貿易委員会(ITC)に「その当時のままの」協定の詳細を明らかにし、ITCにたいして協定がおよぼしうる経済的影響の評価を準備するよう要請しなければならない(Sec. 105(c)(1))。オバマ政権はこれまでITCに対して、最終的な詳細を明らかにすることはできていないが、同評価をおこなうようすでに要請した。ITCは、最終的なTPP合意が無い中(条件が分からない)で評価をおこなうようにとの政権の要請にこたえるかどうかの回答を拒否しているが、Inside U.S. Tradeは「情報筋」は結局受けることになるだろうと報じている。

l  もし、831日に協定テキストが公表されれば. . . .
ファストトラック(TPA)の規定では、調印の意志を表明した90日以内の議会通告の30日後にテキストを公開することを義務付けている。これは、通商代表(USTR)が「最終テキストはある」と主張しても実際にテキストがないという「不正」を可能にする期間がわずか30日しかないということである。
このような誤魔化しをするためには、議会のテキストへのアクセスを、調印の意志を示す通告期間である30日間禁止することを必要とする。つまり、最終テキストは、調印する意思の通告が行われる以前に最終的なテキストができている必要がある。

テキストが公開されなければならない時までの最小限の期間――協定完成と調印の意志通告から30日後までSec. 106(a)(1)(B))。また、大統領がTPP調印の意志を議会に通告してから30日以内に、政府の貿易諮問委員会(複数)は、未解決の協定についての見解を大統領、議会、通商代表に報告しなければならない(Sec. 105(b)(4))。

l  もしTPP条文が1030日に調印されるばあい. . . . その場合には最終テキストの法的仕上げが90日以内で行われることが必要である。それはどの言語のテキストを公式テキストとするかについての不一致が英語とスペイン語だけを公式とすることで解決されることになれば可能である。法律の専門家は、交渉終結の後に必要な法的仕上げの時間を短縮するために、交渉中に、できあがった英語のTPP各章の法的仕上げ作業をおこなってきた。米国の貿易協定の法的仕上げはふつう数カ月かかる。法的仕上げ作業が行われてきているが、法的拘束力をもつテキストに追加の文言があるかもしれないということからして、交渉が決着してからどれだけの時間を要するかは明らかでない。しかし、もし最終的なしあげられたテキストが1030日に調印されたならば、法律の施行の提出に向けた30日間のカウントダウンが始まりうる。

TPP実施法が提出されるまでの期間:30。ファストトラック(TPA)は、大統領が最終的に調印されたテキストを米議会に送付してから少なくとも30日間待って、協定実施法案を提出することを義務付けている。TPP調印後のいずれかの時に、大統領は議会に「最終的な法的テキストの写し」および協定を実施に移すために提案された行政府の措置の声明案を提出できる(Sec. 106(a)(1)(D)。大統領は、TPPの最終的な法的テキストの写しを議会に提出してから30日後に、協定実施法案、実施法案がどのように米国の法律を変えて協定の条件にしたがうようにするのかについての説明、協定を実施するために提案される行政府の措置についての最終的な声明、環境および雇用にたいする影響の見通しについての報告、協定実施・執行計画、その他の関係情報を提出できる。

l  もしTPP実施法が1130日に提出されるならば. . . . そのためにはITC(国際貿易委員会)にたいしてTPPの予想される米国の経済的影響についての、規定によって義務付けられた報告を記録的な速さで完了することを求める。規定で義務付けられているわけではないが、議会は常に貿易協定を検討する前にITCの報告を待つようにしてきた。加えて、上院は1130日に開会していなければならない。下院は開会を予定しているが-実行立法は両院とも開会しているときにのみ提案できる。

l  もし議会がほとんど議論もなかった以前の米国の貿易協定について採決にかかった時間の半分で行動するならば. . . .

そうすると、最終的なTPP採決は議会の休日休会前の最後の週におこなわれうる。すなわち1214日に始まる週である。自由貿易協定の実施法案の提出とそうした法案の採決の間の期間の中央値は2週間ということになる。7日(モロッコとの自由貿易協定の場合)から85日(オマーンとの自由貿易協定の場合)までの幅がある。もし過去のFTA(自由貿易協定)すべてを考えると中間値は16日間となる。バーレーンとの自由貿易協定(FTA)の実施法案が、法案上程(これも11月)から、ファストトラックのもとで議会両院で可決されるまで27日要した。これは「反対」票の数の点で少しも議論にならない自由貿易協定の場合である。
TPPの採決をより少ない時間でおこなうことは技術的には可能であるが、TPPの場合は、協定自体がきわめて大きな議論になっていることからしてもっと多くの時間を要する可能性が大きい。これには、実施法案の最終審議を行わない委員会での最小限審議も行われるだろう。

TPPの議会審議にかける最大限の時間. . .
TPP実施法案の上程から45議会日以内:米下院歳入委員会は、法案を報告しなければならない。さもなければ自動的に取り下げられる(19 USC 2191(e)(1))TPP実施法案が下院歳入委員会を離れる15議会日以内:下院本会議は法案を採決しなければならない(19 USC 2191(e)(1))。下院採決から15議会日以内:上院財政委員会は法案を報告しなければならない、さもなければ自動的に取り下げられる(19 USC 2191(e)(2))。法案が上院財政委員会をはなれて15日以内に上院本会議は法案を採決しなければならない。実施法案が議会両院を通過したあといつでも:大統領は実施法案に署名することができる。
少なくともTPPが発効する30日前:大統領は他の協定参加国すべてが、協定の条件に適合するよう国内法を変えたことを議会に通告しなければならない(「協定の諸条項にしたがうために必要な措置がとられ」)大統領が満足のいくようにする(Sec. 106(a)(1)(G))。

*義務付けられているITC報告についてのメモ: 大統領がTPPに署名してから105日内にITCは大統領と議会にたいして、協定により予想される経済的影響についての報告を提出しいなければならない (Sec. 105(c)(2))。最近米国が締結したすべての自由貿易協定はITCがその報告を完了したあとのみ、議会で採決されてきた。
20152月、マイケル・フロマン米通商代表はITCにたいし、まだテキストは交渉中でるがまず評価を開始し、評価を2015年夏までに終えるように求めた。アービング・ウィリアムズ(Irving Williams)前ITC委員長は、TPP評価にはすくなくとも5か月かかると考えた。ITCがいつ評価を完了するかは不透明である。

★原文: TPP Vote Calendar Obama Administration Hype About a TPP Vote in 2015 Does Not Comport with Fast Track Timelines

http://www.citizen.org/documents/TPP-vote-calendar.pdf




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